拾八

13/24
前へ
/304ページ
次へ
「沖田さん」 呼ぶ声がして沖田が振り向くと、翔がこちらへ向かって走ってきていた。 「怪我したんですか」 青ざめて、懐からハンカチを取り出した。 肩に巻こうと手を伸ばした翔をそのまま抱き寄せた。 「あの…」 「うん?」 「手当て、できないんですけど」 「そうだね」 「………伊東、殺ったんですね」 「…………うん」 肩から事切れた伊東が見えたのだろう。 冷静な口調で、翔がどう思っているのか計ることはできなかった。 殺さないほうがよかった? 沖田は聞くことはできなかった。 体を離して顔を背ける。 「さて、残党が来る前に配置につかないとね。 僕の隊はどこ?」 「あ、こっちです。でも、手当て…」 「大丈夫、自分でできるよ」 頭に巻いていたハチマキをするりと抜いて、傷口に巻いた。 「そう、ですか」 翔はハンカチをギュッと握りしめた。
/304ページ

最初のコメントを投稿しよう!

705人が本棚に入れています
本棚に追加