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「沖田さん」
呼ぶ声がして沖田が振り向くと、翔がこちらへ向かって走ってきていた。
「怪我したんですか」
青ざめて、懐からハンカチを取り出した。
肩に巻こうと手を伸ばした翔をそのまま抱き寄せた。
「あの…」
「うん?」
「手当て、できないんですけど」
「そうだね」
「………伊東、殺ったんですね」
「…………うん」
肩から事切れた伊東が見えたのだろう。
冷静な口調で、翔がどう思っているのか計ることはできなかった。
殺さないほうがよかった?
沖田は聞くことはできなかった。
体を離して顔を背ける。
「さて、残党が来る前に配置につかないとね。
僕の隊はどこ?」
「あ、こっちです。でも、手当て…」
「大丈夫、自分でできるよ」
頭に巻いていたハチマキをするりと抜いて、傷口に巻いた。
「そう、ですか」
翔はハンカチをギュッと握りしめた。
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