教会襲撃

3/27
前へ
/171ページ
次へ
「虹助、ここにいたのですね。毎日のお祈り感心です」  いつのまにか、アニエルが後ろに立っていた。 気配をまだ読めない自分が虹助は少し悔しかった。  ラウザなら、すぐに気づいただろう。 「シスター、何か用?」  虹助は、目上の者にも敬語をあまり使わない。 それを咎める者も、この教会にはいない。ここでは、自由が多い。  エルザが、自由を称える者だったからだろう。 「最近、この辺りで盗賊が出ると噂があります。裏山にはあまり行かないようにしてくださいね」 「なんで知ってるんだ? 僕が裏山に行ってること。ばれないようにしてたつもりだけど?」 「ラウザから聞いていますから。貴方の秘密も」 「チッ、ラウザの奴が話したのか」 「えぇ、貴方を心配したのでしょう。色力は遺伝するとも言われているらしいですね? ラウザからいろいろ聞きました。不安もあるでしょうが、大丈夫ですよ。エルザ様が見ていますからね」 「おしゃべりなのは好きじゃない……」 「ごめんなさい。でも、いつでも私を頼ってください」 「……用はそれだけ? なら行くね」  虹助は、それだけ言い残し礼拝堂を後にした。
/171ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加