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「虹助、ここにいたのですね。毎日のお祈り感心です」
いつのまにか、アニエルが後ろに立っていた。
気配をまだ読めない自分が虹助は少し悔しかった。
ラウザなら、すぐに気づいただろう。
「シスター、何か用?」
虹助は、目上の者にも敬語をあまり使わない。
それを咎める者も、この教会にはいない。ここでは、自由が多い。
エルザが、自由を称える者だったからだろう。
「最近、この辺りで盗賊が出ると噂があります。裏山にはあまり行かないようにしてくださいね」
「なんで知ってるんだ? 僕が裏山に行ってること。ばれないようにしてたつもりだけど?」
「ラウザから聞いていますから。貴方の秘密も」
「チッ、ラウザの奴が話したのか」
「えぇ、貴方を心配したのでしょう。色力は遺伝するとも言われているらしいですね? ラウザからいろいろ聞きました。不安もあるでしょうが、大丈夫ですよ。エルザ様が見ていますからね」
「おしゃべりなのは好きじゃない……」
「ごめんなさい。でも、いつでも私を頼ってください」
「……用はそれだけ? なら行くね」
虹助は、それだけ言い残し礼拝堂を後にした。
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