預けられた子たち

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「うーそつーき、こーうすけ! バーカバーカ!」  静かな森、獣も見当たらない場所に響く声。 「嘘つき? じゃあ君たちは臆病者だね、そんな真似をするんだから」  歳は七つくらいの男の子が、数人の子供たちに囲まれている。どうやらイジメられているようだ。 「虹助のくせに生意気に口答えすんなよ!」  イジメっこの一人が虹助の襟首を掴み声を荒げる。それに臆することなく虹助はイジメっこを睨みつけた。 「殴りたければ殴ればいい」  その言葉に従うように拳を握りしめ振りかぶる。いつもの光景だ。 「やめろ! お前たち!」  拳が虹助の顔に激突する寸前で、何者かがイジメっこの手首を掴み制した。 「ゲッ! ラウザだ! にげろー」  イジメっこたちは逃げるように走り去る。 それを、ラウザと呼ばれた青年は優しい笑みで見つめた。 「なんだよ、ラウザ。僕に何か用か? 暇人だな」  虹助は、憎まれ口をたたきながらラウザを見上げた。 「いや、お前がまたイジメられているのを見てな。しかし、やり返さないのか? お前は……」 「言うなよ、秘密なんだから。それに、痛いだろ? 叩くあいつらも」 「優しすぎるんだよ、お前は」  頭に手を置きながらラウザは微笑んだ。 「やめろ、こんなところ見られたくない」  頭に置かれた手を払い除ける虹助。
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