預けられた子たち

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「旅……か。僕は何者なんだ? こんな力を持っているなんて」  虹助は、懐に手を入れ何かを取り出した。  それは勾玉(まがたま)のような綺麗な石、これは色力を扱う為の媒介だ。  これに、色力を溜め込み解放する事で武器に姿を変える。 「こんな力……戦争の道具でしかないのに」  虹助は、勾玉を強く握りしめ空を見上げた。 ----  それから、気がついた時には虹助は教会の中にいた。  もう晩飯の時間ということもあり、スープの匂いが虹助の鼻に届いていた。  匂いに誘われるように食卓へと、歩み寄る虹助。 もう、虹助以外の子供たちは席についているようだ。  虹助も、静かに自分の席についた。目の前に用意された物は、透明に近い色のスープにパンが二つ。  これが、いつもの食事だ。  別に教会だからと言って質素な食事なのだ、という訳ではない。  戦争の為に栄養のある食材は全て高価であり、ほとんどが兵士たちに支給される物でもあるからだ。  教会は、寄付金でやりくりしているため贅沢は出来ない。 「天と地を築いた精霊、我らを導いたエルザ様に感謝してハーレム」 「「ハーレム」」 祈りを済ませた皆が、静かに食事を始めた。 明日はラウザが旅立つ、そのため皆がラウザとの思い出を話しながら和やかな食事を楽しんだ。 哀しさや寂しさはない。  皆、いつかは旅立つのだ。色力を使える者は皆。使えない者は、シスターや神父として働く。それが決まりだ。哀しくはない。  色力を使えるのは誇らしい事だ、だからこの教会から騎士になるかもしれない者が旅立つ事は名誉なのだ。  ラウザは18歳。まだ、幼いといえば幼い。  しかし色力を使う者は皆、修行をしなければいけない使命がある。  いつか戦争を終わらせる為に。戦わなければ、終わらせなければならない。  それが教会にいる皆の望みだから。
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