89人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日、天候は晴れていた。春らしい気持ちのいい朝。旅立ちに相応しい日。
「じゃあ皆、俺は行くから。いつか寄付金を贈るよ。偉くなるからさ」
ラウザは微笑みを絶やさず皆を見回した。それに応えるように子供たちは笑う。
「気をつけるのですよ。ラウザは、落ち着きすぎている。戦いになったら緊張感を持つのを忘れてはダメですからね」
シスターは心配そうにラウザの手を握る。
「心配ないですよ。わかっています。シスターアニエル。貴女をいつか迎えに来ますから。好きですよ」
「なっ! そんなこと皆の前でよしてください」
アニエルは頬を赤らめる。
「「ヒューヒュー」」
他の子供たちも少なからず二人の関係に気づいていた。恋仲だろうと。
「ラウザ! シスターを泣かせるなよ!」
「帰ってこいよ! 戦争終わらせてくれ」
皆、ラウザに期待している。剣の腕も、体術にも長けているラウザを信頼しているのだ。
「あ、それより虹助はどうした? あいつ朝は早いはずだろ? 見当たらないが……」
見回しても、どこにも見当たらない。
「さあ? 朝起きたら、もうベットにはいなかったぜ? ラウザもみたじゃん」
「そうなんだが……ったく、あいつは俺を見送ってくれないのか、弟子のくせに」
最後のほうは、皆に聞こえないように呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!