camellia

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玄関を出て、庭の様な道を歩いて門を出ると、黒いベンツが一台止まっていた。 車の前で待っているのは、桜庭……かと思ったら違う人だった。 いかにも真面目そうな、それでいて美しい顔立ちの、20代半ばぐらいの男の人。気持ち悪い笑みを浮かべている桜庭とは違い、この人は無表情だった。 男の人はあたし達に気付くと、何も言わずに車のドアを開けた。 あたしと龍がそれに乗ると、またなにも言わずにドアを閉めて、運転席に乗って来た。 「桜庭は?」 車が発進したのと同時ぐらいにあたしが言うと、運転手は 「先ほど、お帰りになられました。」 って無表情で言ったから、あたしはため息交じりに 「あいつほんとに運転手なのかよ……」 と言って項垂れると、運転手はとんでもない事を口にした。 「桜庭様は龍馬家の使用人ではございません。」 その言葉を聞いた瞬間、あたしは顔を上げ、龍は唖然とした。 「「……え?」」 そして、龍とあたしの声が重なった。使用人はあたし達に構わず、淡々と説明を始めた。 「桜庭様は龍馬グループの幹部です。私の記憶が正しければ、現在は長期休暇をとっていると思います。紅様の運転手をしているのは何故かと言うと……」 不意に運転手が話すのを止めて、あたしと龍は顔を見合わせた。 続きを聞こうと思って、運転手に話しかけようとしたら、口を開いて、何事もなかったかのように話し始めた。 「ただの気まぐれだ、と依然お聞きした時におっしゃっていました。しかし、旦那様が最も信頼している高校時代のご友人方に紅様を見守るように頼んでいるのではないか、と言う噂も耳に入ってきております。どちらが本当かは分かりませんが……」 それきり、運転手は喋らなくなった。 桜庭、運転手じゃなかったのか!!!!! 今までの自由な行動にも説明がつくしなぁ。 「驚いたな。いやー、ビックリした!!!!」 って龍は眼を見開いていたが、あたしはなんだか妙に納得していた。
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