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あたしは、中身が異様に気になって開けようと真紅の薔薇に手をかけた。
『~♪』
でもそれは、桜庭からの電話によって遮られてしまった。
あたしは、封筒をカバンに閉まって電話を取り出す。
そして、昇降口を出ながら携帯を耳に当てる。
『なんか用かー?』
呑気な桜庭につい力が抜ける。
あたしは正門に向かう足を速めた。
「んー、帰るから車まわして。」
あたしがそう言うと、ガチャガチャと電話越しに音がした。
どうやら、既に準備を始めてるらしい。
『おしっ、後はこの企画を……おっと、車だな。すぐ行くから待っとけ』
桜庭はそう言うと一方的に切ってしまった。
企画か……
そう言えばこないだ笹倉が
『桜庭様は龍馬グループの幹部です』
とかなんとか言ってたな。
あたしはまた歩くスピードを緩めて考えに集中する。
休暇を取ってても、仕事はある……みたいな雰囲気だったな。
それプラス、あたしの運転手だもんなぁ。
……ちょっとは、いたわってやってもいいかな、なんて考えにふけっていると、いつの間にか正門に着いていた。
あたしは、正門の壁に体重を預ける。
空は嫌に綺麗で、綺麗過ぎて吐き気がした。
…………この時、あたしは気付かなかったんだ。
あの手紙の意味を。
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