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「……来ねえじゃん」
電話が切れて30分。
あたしは未だに正門の前にいた。
こんな時いつもなら笹倉に連絡するのに……
笹倉は電話に出ないし、どうしたのかと思ってさっき親父に聞いたら
長期休暇を昨日から取ってるらしい。
はぁ、とため息をついてその場にしゃがみこんだのと同時に
「紅……様?」
声がした方を振り向くと、しんどそうな花宮さんがいた。
花宮さんは、パーティーからずっと会ってなくて、もちろん学校で見るのも初めて。
花宮さんは、漆黒の髪を横で一つに縛り、耳にはピアスが覗いていた。
真紅の薔薇のピアスに、あたしは封筒を思い出した。
家に帰ったら開けよう。
そう思って花宮さんを再び見ると、今にも倒れそうだった。
そんな姿も、綺麗過ぎて一瞬怯んだけど、あたしは花宮さんに近寄って、身体を支えた。
大きな目から伸びた長いまつげ。
白い頬はほんのり赤く染まっていて。
…………ほんとにしんどそうだな。
「紅様……すみま……せ」
「気にしないで!!よく龍の看病とかしてるから、病人の扱いには慣れてんだ」
そんな会話をしてると、ちょうど桜庭が現れた。
花宮さんを置いてく訳には行かないし……よし。
「桜庭、開けて」
あたしがそう言うと、花宮さんがいるからか、表の顔で大人しくドアを開けてくれる。
あたしはぐったりしてる花宮さんを車に寝かせてから、助手席に乗り込んだ。
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