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明日は僕が通っている中学校の始業式、そして明日から僕はネットでは厨二と呼ばれる人になる。
つまり今日は中学一年生の最後の日。
なんだかんだ緊張しつつも楽しい一年で、色々と新鮮な一年になっていた。
そんな日の終わりと、明日からの日々に期待を馳せて準備をしていたら玄関の扉が開いた。
今は午後10時、こんな時間にやってくるような人は早々いないが、我が家には一人だけいる。
「父さんっ」
そう父さんだ。
父さんは世界的な仕事をしているためか、家にいる時間よりも海外にいるほうが多い、しかしたまに帰ってくるときは決まって海外のお土産がある。
僕が玄関に迎う途中で、突然横にあった扉も開いた。
「パパァー」
妹の川田黒葉だ。
小学三年生、いや明日からは小学四年生になる妹だが、周りに比べると精神的にも肉体的にも成長が遅れているような気がする。
妹の黒葉が開けた扉を避けて、黒葉と共に玄関にいる父さんの元に急いだ。
父さんは僕達を見て満面の笑みを浮かべて、荷物を持った手を離して荷物を置くと、両手を広げた。
黒葉は当然のように父さんに抱き付いた。
僕も小学三年生の頃まではそうやって抱きついていたのだが、流石にもう恥ずかしい。
僕の心情を知ったように、父さんは黒葉を抱きかかえつつ僕の頭を力強く撫でた。
「拓朗~」
そんな叫び声のようなまでの声を聞くと、僕はもちろん黒葉までが父さんから離れた。
しかし時すでにおそし、我家の母川田久恵が父さんに両手を広げて抱き付いた。
僕と黒葉はその抱擁に巻き添えをくらい、苦しい程の抱擁をされた。
父さんの名前川田拓朗という名前を聞き、昔母から聞いた僕と黒葉の名前の由来を思い出していた。
単純な話、拓朗(タクロウ)のたくから琢己(タクミ)、くろから黒葉(クロハ)という単純な話だったが、そのまで母が父さんのことを愛せていたことか、感じられた。
「ママ~苦しいぃ~」
黒葉が浮いた足をブルブル振って、そう訴える。
確かに黒葉に向った母の左腕は黒葉の首にあたっている、僕はまだ脇の下にしか行ってなかったから良かったものの、黒葉はキツそうだ。
「あっ黒葉ゴメンね、琢己も大丈夫?」
母はやっと気付いたように抱擁から僕達を解放した。
「母さん、父さんに何か作ったら?」
僕のその提案で母は
「待っててね、今すぐ作るから」
そういって、母はキッチンに向っていった。
さて、お土産の時間だ…
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