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「春香――ごめんね。ありがとう」
私は、私を見舞いに呼ばなかった彼女に感謝した。
きっと彼女は私がこうなってしまうことを予想したのだろう。
だから何も教えてくれなかった。
結局その日は授業どころではなく、下校することとなった。
一人で校門を出る私の肩を叩く人が一人。
振り返ると木下だった。
「お前は大丈夫だよな?」
「何が?」
「水野の近くに居ただろう?感染してないのかと思って」
「今のところは大丈夫そうだけど」
「そっか」
木下はホッとしたような表情を浮かべた。
こいつは馬鹿か。
感染の可能性のある奴には、普通近づかない。
それなのにわざわざやって来てそんな事を聞く。
「家まで送るよ」
「いい」
「念の為に!」
「感染の可能性を疑っているのなら、私には近づかない方がいい」
ぴしゃりと言いきった筈だったが、彼はあろうことか私の言葉を気にすることなく、私の手をとり駅へと歩き出した。
感染するかもしれない。
別に彼が自ら感染しようがしまいが彼の勝手だが、私が原因で死んだんだ、なんて思われるのはまっぴらだった。
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