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「同じ方向だが、電車は別々に乗る。私は一つ後に乗るから」
「手を繋いでいるんだから今更じゃん。家も近いんだし一緒に帰ろう」
「嫌だ」
何故彼が此処まで心配してくれるのか分からないが、彼を犠牲者にしたくない、そう思った。
私は病院に行った方がいいのだろうか。
でももし正常の状態で院内感染している中を歩きまわったらと思うと、ぞっとする。
見舞いに言った奴らの証言道理の姿になった自分を想像してみる。
正直、そんな風になるのは御免だ。
私はまだ若い。
夢も目標もないが、まだ死にたくない。
だから早くこの騒ぎが収まるのを願うばかりだ。
「大丈夫だって」
突然聞こえてきた木下の声に少しだけ驚愕する。
どうやら思考の海に沈んでいたらしい。
「何が大丈夫だって?王子」
「いざとなったらオレにうつせばいいんだよ。一緒に苦しんで、一緒に死んであげるから。あ、勿論部屋は相部屋ね」
そんな馬鹿馬鹿しくて冗談じみた言葉を受け流し、私は家路を急いだのだった。
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