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長い休み明けの学校では、皆がダルそうに校内を歩きまわり、友達へ挨拶をしていた。
私もそんな一人で、各クラスの友達に挨拶をして自分のクラスに行った。
スライド式のドアを開けて、誰かが既に明けていた窓から入ってきた風を全身に浴びる。
教室内をぐるりと見回すと、菊の花が一本春香の机に置いてあった。
その机の前には誰かがいて、涙を流していた。
春香と同じ、クラス委員の進藤望だった。
普段は外さない眼鏡を菊の花の近くに置き、めそめそと泣いている。
それもそうか。
友達が死ねば悲しいだろう。
それに彼は彼女のことが好きだったと噂されていた。
聞けば初恋らしい。
それは悲しいだろう。
それに比べて私は、涙の一つも流さなかった。
自分と言う人間は案外薄情なのだなと実感した瞬間だった。
そう思いながら私は彼を慰めることなく席につき、春香の机を見つめた。
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