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十二月の中旬、某日。
街全体を吹き、通り抜けていく冷たい風が、街路樹の枝と葉を騒がせる。
今朝見た報道番組によると、今夜は今年一番の冷え込みになるとの事らしいが―――なるほど、確かにすぐ横をすれ違っていく人々はどこか足早だ。
一刻でも早く自宅や暖まれる施設にでも辿り着きたいのだろう、と少年は結論付けた。
―――白色の髪が特徴的な少年だった。
年齢は十代の半ばといった辺りだろうか。整った顔立ちにはまだ幼さが残っている。が、その青い瞳に宿る光は険しく、鋭い。
纏っている雰囲気も他人を寄せ付けない刺々としたもので、とても年相応とは言い難い。自ら世俗との関わりを拒絶している様な印象すら受ける。
そんな少年の名はミーシャ。姓は天照(あまてら)。その名前とやや特殊な風貌からでも分かる通り、彼は純粋な日本人ではない。
この冬からとある目的で故郷から日本へ移り住んだ、ロシア人のハーフである。
そんな彼が両手に抱えているのは、大きなビニール袋。飲料水やジュースの入ったペットボトルがゴロゴロと詰まっている。
ズッシリとした重みで手首、肘、肩と満遍なく疲労を植え付けてくる荷物を忌々し気な表情でミーシャは見下ろすと、
「……くっだらね」
ポツリ、と白い吐息とともに不満を吐き出した。
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