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面白くない。つまらない、と。
自身の現状に対する感想をあえて口にして、彼は一度立ち止まった。
都合良く傍にあった幹の太い街路樹に背を預け、ビニール袋からホットの紅茶が入ったペットボトルを取り出して、蓋を開ける。
口に含んだ甘ったるい液体からは、微かな苦味。
世辞にも『美味しい』とは言えないな、とミーシャは眉を寄せた。
(なーにをやってるンだかな、俺)
こんな状況、局面でこんな事をしていて良いのか、という焦燥にも呆れにも似た感情が少年の頭を過る。
と言うのにも、つい先日の―――四日前に起きたとある事件が関係している。
『組織』と呼称される、徒党を組んだ『候補者』達による襲撃だ。
ミーシャがその一件について知ったのは当日の深夜、すべてが決着した後。『襲撃者達の狙いは自分だった』等の詳しい内容を聞かされたのは、その翌日の事だった。
そもそも『組織』の目的は、『神の後継者を選ぶ』という選考に、ある人物を勝ち残させるというその一点に尽きる。
通称『神の子の選考』―――『神玩具』という特殊な武器を用いて行われる戦い。
ミーシャ自身もその戦いに参加している。強大な力を持った候補者の一人として。
故に、『組織』にとってミーシャとその力の存在は邪魔でしかないのだろう。現に今までも、今回の件の様な襲撃は何回か経験している。
―――が、今回はその『今まで』とは少しばかり事情が違う。
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