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今はそんな事を言っている場合でも無ければ、そんな事で意地を張っていられる状況でも無い。
『組織』からの攻撃は、おそらくこれまで以上に激しくなってくるだろう。加えて、選考も未だ続いている。
その様な局面の中、自分の力も無しに勝ち残れる筈が無い。生き残れる筈が無い。そんな事、彼女とて分かりきっているだろう。
「……クソが」
まったくもって合理的では無い。現実的では無い。思わず、口からは苦々しい言葉が漏れる。
……さっさと神玩具を返してさえいれば、四日前の戦いで彼女が傷を負う事も無かっただろうに。
『強制進化』だか何だか知らないが、自分に本来の力が戻りさえすれば敵などいない。
これまでそうしてきた様に、自分の後ろでただ見ているだけ。そうして立っているだけで、彼女は無傷で勝利を手に出来たというのに……まったく馬鹿な女だ。
(そンな馬鹿の為にこのクソ寒い中、飲み物を調達してる俺も大概だがな……)
四日前に帰ってきてから、美鈴は寝たきりの半病人の様な状態が続いている。敵との戦いで相当な無茶をやらかした様だ。
そんな彼女の看病をしている仲間(仮)の男から、
『ミー兄さん、飲み物が切れたみたいなんで適当に買い出しお願いします。
あ、これお駄賃。お釣りはお小遣いにしていいっスよー』
などと頼まれ、結果として重い荷物を抱える事を強いられている今に至る、という訳だ。
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