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暇だったとは言え、安請け合いした自分自身に呆れを込めてため息をもう一つ。ついでに、ヒトを完全にお子様扱いしているであろうあのクソったれに向けても一つ吐き出しておく。
ゆらゆらと揺れて夜空へと消えていく白い吐息を見送って、彼はゆったりと背中を街路樹から浮かせた。
本当に、こんな事をしていて良いのか、と再びの疑問を誰にでもなく投げ掛けて、視線を自分の手元へ向ける。
すっかり温もりが失われたペットボトルの中には、まだ随分と中身が残っている。
とは言え、これ以上この甘ったるい液体を飲み込む気にもならない。
このまま捨ててしまおうか、と彼は鼻を小さく鳴らすと、横合いへソレを放り投げた。
……ふと、投げてから気づいのだが、よく考えたらペットボトルに蓋をしていなかった。投げ捨てた方とは反対の手に、しっかりと握られたままだ。
まあ、投げたのは車道側だ。中身の液体が飛び散ったところで大した問題は無いだろう、と微妙に焦点のズレた思考を展開して、
「びゃー?」
―――不意に、どこか間の抜けた声がすぐ横から響いてきた。
思わずミーシャがそちらへ目を向ける。
―――と、
「ありゃー、ずぶぬれだぁ」
小さな女の子がいた。頭の上に、先ほどミーシャの投げ捨てたペットボトルを乗せた女の子が。
しかも綺麗に飲み口の部分が頭の上に乗っかってしまっているために、チョンマゲの様になってしまっている。ちょっとした芸術的な光景だ。
『なんで車道側に人が?』という疑問の前に『どうしてそうなった!?』と言わざるを得ない。
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