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そんな思いもよらない出来事と光景に、ポカンとミーシャが呆気に取られる事数秒後、少女の瞳が彼に向けられた。
―――綺麗な青色をした瞳だった。淡いその色は、どこか快晴の空の色を想起させる。
ポタポタと紅茶を滴らせる髪は色が抜けており、金と言うよりは銀色に近い。
珍しい色だが、何処の国の人間なのだろうか? 瞳の色と言い、日本人でない事は明らかだが。
ややあって、少女の小さな赤い唇が動いた。と同時に、ミーシャの思考もようやく通常の働きを取り戻して、
「さむい」
「……あ?」
ひくっ、とその表情を引きつらせた。そんな少年の視線が捉えたのは少女の服装だ。
少女の銀髪と同様に濡れ、紅茶が滴り続けている白色のパーカーは、小柄な彼女が着るには随分と大きい様に見える。フードを被れば目元まで隠れてしまうのではないだろうか。
その服とのサイズ差もあってか、着崩れ、少々はだけてしまっている彼女の胸元は……その、何も身に付けていない様に見えた。
おそらく、濡れたパーカーの下に何も着ていないのだ。端的に言ってしまえば。
そんな薄着+ずぶ濡れ、更には『今年一番の冷え込み』という三重苦を刻み込まれた少女は続ける。
「さむい」
「……」
「死にそう」
どこか感情の色が薄い表情と声色はまったく変えず、しかし顔色だけは死人よりも死人らしい蒼白に染め上げて、少女はその小さな身体を震わせる。
……ああ、と。
その様子を目の当たりに、ミーシャはそんな息を吐き出した。
―――なるほど、これが罪悪感というものなのか、と。
自身の中に初めて生じたその感情に少年が微かな戸惑いを見せる中、少女はなおも震え続けていた。
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