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夜道を、1人の女性が走る。
後ろを気にかけつつ、息を荒くして。
その表情は、恐怖で強張っていた。
彼女を追う者の姿は見えず、女性はその場にへたり込む。
「どうして、どうしてアレが。」
そう呟いた女性の背後に、軍服姿で顔を全体的に狐の仮面で隠した少年が現れた。
背丈から言って、小学生程だろうか。
天高く輝く月が少年の影を作り出し、女性にその存在を知らせる。
「……ゆ…、許して……。」
カチカチと歯を鳴らす女性の背中を、少年は躊躇無くその熊のような爪で引き裂いた。
声にならない声を上げ、倒れ、痙攣する女性に少年が囁く。
「『自分の罪を、その死を以て償え』。 ……許すもんか。」
女性は口を微かに動かし、遂に動かなくなった。
軍服に狐仮面の少年は、伸びをすると辺りを見回す。
小さな飲食店の屋外用防犯カメラが全てを記録していた事を知ると、少年はその近くへ寄って小さく手を振り、去って行った。
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