6人が本棚に入れています
本棚に追加
『ヴォオオオオオオォォォォォォ』
まるで地鳴りのような威嚇に足が竦むが、捕まってしまったら自分達の末路は先程の木のようになるだろう
それが分かっているから2人は全力で逃げるが、唯でさえウサギを追って走っていたのだ
だから足がもつれても仕方ないこと―――
「あっ!」
と、直哉の数メートル後ろで走っていた秀喜が湿地に生えていた草に足をとられ転んでしまった
直哉は秀喜を助け起こしに振り向き近付こうとしたが、目の前の光景に思わず立ち止まってしまう
それは、よろめき立つ秀喜の背中に向かって人の頭ほどある爪が振るわれたところだった
ブシュゥゥゥゥゥッ
鮮血が舞った
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!痛いっ、痛いよ~っ!」
秀喜は涙を流し悲鳴を上げ、よろめきながらもこちらに向けて走り出した
幸い熊の方は思ったよりも血が飛んだのか、目元を拭っている動作をしている
「秀!今の内に急いでっ!」
そう叫んだ直哉には、来た時に通った亀裂が視界に入っていた
(ここから脱け出せばもう追われることはない!)
そう安心したのか直哉が亀裂をくぐり抜けた先は、辺りが暗い、しかしもといた世界だとわかる安心感があった
前の方を目を凝らしてみると、木に寄りかかって座る嬉良が居た
「……あっ、直哉お帰り!遅いから心配だったんだからっ」
最初のコメントを投稿しよう!