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とある街並みの中を二人の男子高校生が歩いている。
学校が終わり、二人は夕焼けのオレンジの中を進んでいた。
回りでは会社帰りのサラリーマンや、車やらで道路は一杯に埋まっている。
そんな中、二人は笑いながら何かを話していた。
平均的な身長に、平均的な学業に平均的な見た目、平均的な……
つまり平均的な男子である榊原夕也(さかきばらゆうや)は隣にいるやつに話しかけた。
「なぁ、勇人って一人っ子だっけ?」
勇人と呼ばれたもう一人の男子はくいっと知的な細いフレームの眼鏡を上げる。
渡部勇人(わたなべはやと)。さらさらの黒髪に、知的な眼鏡。そして何よりクールでかっこいい。
そんな彼はよく告白されているのだが、なぜか頑なに断り続ける。それが、クールだ、何やらでまたモテるみたいなよくわからない循環になっているのだった。
「ん? 俺は姉がいるけど」
「お前姉いたのかよ!?」
「あぁ。言ってなかったっけ?」
「まぁ、聞いてないが。へぇ……」
夕也はうつむいていた。
「そういうお前は確か……一人っ子だよな」
「ま、まぁな……」
夕也は自分の声のトーンをなるべく変えないように頑張った。
ばれたらダメだ。
「ところでさ、なんで勇人は誰とも付き合わねぇの?」
話題を変えるべく、夕也は震える声で言った。
「決まってんじゃん……」
彼の眼鏡が夕焼けでキランと光った。
「みんなロリじゃないからさ」
そう格好よくいい放った。
そう、勇人は生粋のロリコンだった。同い年にそんな人はいないだなんやらで、付き合おうとはしない。
「……はぁ……」
「何ため息なんかついてんだよ」
「なんでもねぇよ。っとここ左だ」
「俺は右だな。じゃあ、また明日な」
「おう。またな勇人」
「うぃ、夕也」
別れを言ってから夕也は重い足取りで家への道を歩いていく。
いつもより気が重い。
その理由は……
家の前にいつの間にかついていた。過ぎてほしくない時間はすぐ過ぎるってホントなんだなと、休み時間の定理を思い出しながら扉を開ける。
「あ、おかえりなさい」
そこには中学生くらいの女子がいた。長い金色の髪を後ろでポニーテールにしている。
「あ、あぁ……。ただいま」
「今日の夕飯はすき焼きですよ。お兄さんの好きな料理だって義母から聞きましたよ」
彼女は可愛らしい顔を傾け、満面の笑みを夕也に向ける。
そして静かにリビングの中へと入っていった。
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