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「何をするのっ、メル!ダリアが・・・ダリアが死んじゃう!」
いくら火属性の初級魔法といえど、防御も無し、構えもせず、直接、至近距離で当たってしまったら・・・?
ケイトの頬に、髪の毛を伝って、流れてきた汗が触れる。
「・・・見て」
メルは、ケイトのほうを向かず、ダリアに目線を向けたままだった。
「ヒドイじゃないか、メル」
そこには、火の玉を、右の手のひらで打ち消した、ダリア。
口調どころか、声質、声色さえ、違う。
ケイトは、ダリアから一歩、離れた。
その行動は、本能によるものであった。ケイトの足が、少しだが、ガタガタと震え、彼は細い腕で、自分の身を覆った。
「・・・久しぶりだな、魔王」
静かな、落ち着いた声。
しかし、その言葉を言い切ったリースから、放たれたのは、火の玉。
「久しぶりだな」
それを、左手のひらで打ち消す、ダリア・・・否、魔王。
三人はにらみ合う。
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