Silvery snow

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「着いたぞ。ここが、依頼された洞窟・・・・マーダラ洞窟だ」 マーダラ洞窟の入り口は大きく、まるで、雪華たちを飲み込もうとしているドラゴンのように構えていた。 太陽の光が入らないように、遮断壁があるかのように、一寸先は闇・・・・・。 入り口に、一歩でも入れば、光など無かった。 「行けるか?」 これほどの闇は、そうそうない。 この闇の中で、目が利く者は、二人・・・・メルとリースしかいなかった。 リースの問いかけに、意気込んでいたダリアは、大きく頷く。 ケイトは・・・・震えながらも、作り笑いではありながらも、笑顔で頷いた。 センは、しゃがみこんでいた。 心なしか、肩が震えている。 「あの時のこと・・・まだ、引き摺っているのか?」 リースが尋ねる。 あの時、が何なのか。 それが分かるのは、リースとセンのみ。 皆、センの返答を待った。 ・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。 「じゃあ・・・・」 センが顔を上げず、呟いた。 「じゃあ・・・お前は・・・・」 センが勢いよく、顔を上げた。 「お前は、引き摺ってねえのかよ!あの時のこと!もう、忘れたのかよ!」 怒鳴り散らすセン。しかし、リースは顔色一つ変えなかった。 「あれより前は、断片的にしか、覚えていない。あの時のことは、引き摺ってても、仕方が無いだろう」 センは、悔しそうに唇を噛んだ。 強く噛んだせいか、センの唇から、鮮血がツーと垂れた。 「・・・・・ひーちゃんのこともか?」 センが、呟いた。
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