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「ひーちゃんのことも忘れたのか?」
先程の、怒りを露わにしたような感じではなく、柔らかな口調で、リースに尋ねた。
「ひーちゃん・・・・か。大切な人だとは覚えてる。それ以外は、思い出せない・・・・・・」
リースが言葉を切る。
数秒の時間が、まるで、何分、何時間とかかったように、感じられる。
そんな時間を断ち切ったのは、リースだった。
「あの時・・・・死んだことも・・・・覚えてる・・・・・。俺の・・・・目の前で・・・・・」
リースが、全員に背を向けた。何も言うことなく、マーダラ洞窟へと、歩を進める。
リースが、闇に溶け込む。
そして、彼は闇に飲み込まれた。
「ま、待って!リース!」
ダリアも、ケイトもとめる。
彼女等にとって、リースはただの学生でしかないからだ。
追いかける彼女たちを止めたのは、メルだった。
「だめ・・・・」
メルの目頭には、透明で美しい水の珠が膨らんでいた。
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