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「くそっ!あいつは・・・・ひーちゃんとの思い出も・・・・忘れちまったのかよ!」
センは、自らの拳を地面に叩きつける。
地面は、硬く、センの拳から血が垂れた。
それでも、彼は地面を殴るのを、やめなかった。
「くそぉおおおおっ!」
その声は、洞窟に反響した。
メルは、黙って洞窟を見つめた。そして、笑う。
その姿は、仲間を待つ者の姿だった。
「変わりましたね、神帝様」
いつの間にか隣にいた雪華が、そうメルに呟いた。
「ここで、その名を・・・・!」
「大丈夫ですわ。皆さん、センのほうに行ってますもの」
雪華は、優しく微笑んだ。
「神帝様は、今まで一匹狼でしたから、そうやって、仲間を待つ・・・なんて姿をすること、ありませんでしたわね」
としみじみ言う雪華。
彼女は、今までのメル・・・神帝を見てきているのだ。その瞬間を思い出しているのだろう。
「でも・・・あなたには、友が出来ました。場所が出来ました。・・・・・信じられる・・・・泣ける、仲間が出来ました」
そして、再び優しく微笑む。
メルも、微笑んだ。その瞳には、今までと違う、優しく、温かい光が宿った。
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