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「あ、自己紹介。私・・・・・・その、桜月 緋芽【さくらづき ひめ】と申します・・・・・・。」
少女は優雅に手を口の前で揃えて、「そういえば」という顔をしてから自己紹介をした。
少年はいまだ浮かない顔をしている。
「はあ。全帝とあろう人が。気づかないだなんてね。」
ギルドマスターが言うが、少年の様子は変わらず、不思議そうにしている。
少年はこの部屋に張り巡らせておいた魔力を探知する探知魔法にさらに魔力を込めて、威力を上げた。
「なっ・・・・・・!」
少年が小さく声を上げる。冷たくクールで、無表情だった彼の表情は一変、相当驚いたのか、表情に出ている。
「天空の・・・・・・舞姫・・・様?」
それを聞いて彼女は、まさに天使というような笑顔を少年に向けた。それは少年の言う彼女の正体を肯定しているものだった。
「なあ、ギルドマスター。」
「なに?」
ギルドマスターは机の上の書類を整えながら返事を返す。
「俺が、上司と学校に行けと?」
ギルドマスターは平然と「ええ」と言う。少年の表情は再び無表情となった。
「分かってますよね?俺たちにはすでに大学卒業レベルの知識はありますし、実力も経験も。行く必要は・・・・・・。」
ギルドマスターは笑顔を作って、少年に優しい口調と語りかけた。
「あなたたちには休暇が必要。それに、この歳で行かないのは不味いわ。それに。」
それに・・・・・・なんなのか。少年には見当もつかなかった。
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