14人が本棚に入れています
本棚に追加
「今日から俺はリア充だー!」
そう、新年を迎えると共に職の終わりを迎えたおめでたい俺。
新年そうそう職無しとか超ウケるんですけど。
…え?
それのどこがリア充かって?
ふふふ…それはですね。
にやにや笑いが貼り付いた顔で預金通帳を開き、中身を確認。
0が六個…一番上は秘密。
そう!
俺がこの日の為に汗水垂らして稼いだ、努力と忍耐の結晶!
時間はある!
金もある!
これを真のリア充としてなんと言うか!!!
はーはっはっ!
余を崇めよ愚民ども!
はーはっはっはっ!
「…っと、テンション上がりすぎてはしゃぎすぎた…何やってんの、俺」
自分以外は誰もいない部屋、脳内独りお喋りを繰り広げていた俺は、ため息をついて椅子に座る。
中学生の頃から愛用している回転椅子は、ギシリと音を立てて俺を迎え入れた。
やはり、慣れた椅子は良い。
「さて、と…これからどうするか」
こんなご時世に職を失ってしまうと、次の仕事なんて中々見つからないもので…。
なので、一応真面目に考えてみる。
「まぁ、のんびり探すか。何にせよ、リア充満喫したいし」
仕事のお陰で、すっかりやらなくなったゲームだってやりたいし、昼飯代を削って買い漁った図書の数々だって読んでやりたいし…それこそ、やりたいことは無限大。
俺の夢の分だけ可能性が広がる。
考えるだけでウキウキが止まらない。
「くはは、我ながらアホだな、アホ。首切られてここまで嬉しがっているんだからな」
誰に言うわけでもなく呟いて、椅子のまま移動して本棚の前に。
何度か目移りしてみたくらいにして、整頓された本の列から一冊を取り出す。
「『ちょっと待ってよ!お狐様!』シリーズ、こいつは何度も読んでしまうんだよな…うん」
表紙にかかれた狐巫女をぼんやりと眺めてページを開く。
主人公と狐巫女が、ページ狭しと暴れまわる。
最初のコメントを投稿しよう!