次の職業は勇者

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「そういや、アイツ元気かな…今度新作書くって意気込んでたけど」 アイツとは、今読んでいる本の作者にして俺の友人。 飲まず食わずで執筆に勤しむような馬鹿なので、時折心配で連絡したりはするが…今はやめておこう、気分じゃない。 「さて、続き続き。時間は待っちゃくれないからねぇ…って、もう仕事ないから急く必要も無いのだけど」 ケラケラと笑って、再びページに意識を飛ばす。 自らを登場人物達の目線と重ね合わせ、物語の雰囲気を堪能していると…不意に視界に入る異物がひとつ。 それは、神々しい光に包まれて、上質な素材であろう衣を身に纏い、穏やかな微笑みを称えて立っていた。 部屋の中央で。 …そんなもの、無視だよな普通。 俺はそれをチラリと横目で一瞥し、再びページに目を落とす。 すると、構ってくれないことに驚いたのか、それは明らかに慌てふためく。 「えぇ!?こういう場合、普通は…誰ですか?みたいに話し掛けたり、誰だこの人!?みたいなノリで注目したりするんじゃないの!?…うーん、目立ち足りないか…」 そういう問題ではない、アホかこいつ。 早いとこ消えてくれ、そして静かに本を読ませろ。 すると、その老人は念仏らしき呪文を唱え…ボワン!と煙に包まれたかと思うと、老人だったそれは、アニメの中で出てきそうな制服美少女に変化した。 …どうでもいいが、非常に煙たい。 俺は、ため息を一つついて読んでいた本のページに指を挟んで持ち、重い腰を上げた。 「おぉ!流石に美少女になった私には反応したか!アンタも好きねぇー」 可愛らしい声で鳴くそれの横を素通りし、その後ろにあった窓を全開にして換気を行う。 煙が粗方出ていき、部屋の空気が澄んできたのを確認してから俺は、窓を閉めて先程と同じ要領で回転椅子へと戻り腰掛けた。
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