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満足いくまで本を読んだ俺は、部屋を出て一階の居間に降りる。
そう、何を隠そう俺は実家暮らしだ。
二階建て、築ウン十年、最近外側をリフォームして綺麗にしたが中身は相変わらずで、歩けば床が軋む…そんな家に、父親と母親、そして妹の四人暮らしをしている訳です。
姉と兄もいたのだが、二人はもう家に居ない…ってまぁ、そんなのはどうでもいい話か。
居間の扉を開けると、母親と妹が仲良く同時に振り向いた。
二人とも、口にくわえた餅を伸ばしながら。
「…二人とも、何してんの?」
「…何って、雑煮食べてるに決まってるでしょ。ねぇ?」
俺の言葉に、餅を千切って飲み込んだ母親がさも当然のように答える。
そして、同意を求められた妹は…。
「龍も食えば?美味いよ?」
餅を伸ばしながら喋ってきたのを何とか翻訳。
妹よ、下品だからちゃんと食べてから話せ。
そして、いい加減呼び捨てやめ…って、コレはいいか。言って直るもんじゃ無いだろうし。
今更『お兄ちゃん』とか『お兄様』とか『兄君』とか『にいや』とか言われても…正直、引く。
見た目が悪いわけではなく、気分的な問題。
そんな俺の思案も知らずに、首を傾げながら暢気に餅をもちゃもちゃ食べる妹。若干18歳。
見た目売れ筋、成績優秀、某大手企業に勤めるイケメン彼氏持ち。
パーフェクト、言うことない。
君は勝ち組だ。
だから、ちっとは上品に振る舞え。
自分の思案終了と共にため息をつき、俺は妹の隣に座り雑煮を母親にねだる。
「餅何枚食べる?」
「…いや、一枚で良いよ…どんだけ食わせたいんだ」
「むむ、アンタ…もっと食べなさい。食わなすぎ」
「母さんと流奈(るな)の無限胃袋と一緒にすんな…俺の臓器は繊細なんだよ」
その発言に、母親と妹の流奈に睨まれた。
…俺は真実しか言っていない。
「はぁ…わかった、今作って来るから待ってなさい」
「あいあい」
「あーいあい」
「「「おさーるさーんだよー」」」
突如始まった親子合唱に、一同爆笑。
…全く、アホな身内を持つと退屈しないね。
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