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「あの川の向こうには何があるのかしら…」
圭子は、遠い目をして呟いた
明日、圭子は施設に入所する
この場所に散歩に来るのは、今日が最後になるだろう
「圭子…」
「はい?」
「見えるか?…雪が降っているよ」
空からはヒラヒラとぼたん雪が舞っている
「本当、綺麗…ねぇ、貴方…」
「圭子…圭子…」
「…何?」
僕は答える変わりに、圭子の肩に手を置いた
「…何なの?おかしな人ね…」
圭子は肩に置かれた僕の手にそっと自分の手を重ねた
雪が舞い、風は冷たく吹き荒れたけど、その手はほんわりと暖かかった
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