此岸(しがん)にて…

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「木崎さん、特別養護老人ホームの空きが出ましたよ」 その日は突然やってきた ケアマネージャーの広田さんから、そう告げられた 「いや、でもね…まだ僕達は二人でやっていけると思うんだよ」 「木崎さん…これを断ったらまた何年か先になるんですよ、腰が痛むってよく話されてるでしょう?」 そうだ…僕だって年を取ってあちこち痛む 近頃は自分の事さえ、おぼつかない 「でも…圭子が寂しがる…」 「…木崎さん」 そうだ、分かってる 寂しいのは僕の方だ 男は弱い…圭子が病気になってから、痛感していた いつもいつも、圭子に守られていたのは僕の方だ
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