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『それに神來くんの屋敷には桜ちゃんもいるし、凛ちゃんも住みやすいかと。どうですか?長老様。』
金愁はそう言い、神來の方に向けて黒い笑顔を見せる。
『......神來、金愁に何か恨まれるような事をしたのか?』
『...心当たりねぇ...。』
金愁のあまりの黒さに、たまらず雲条は神來に質問する。
そして、神來には反論する気力が起きなかった。
『......うむ。神來の屋敷か。儂も良き案だと思うのう。神來にとっても良い経験となるであろうからな。どうじゃ?...凛。』
『ジイさん、俺には聞かねぇーのかよっ!』
思わずツッコミを入れる神來。
『お主に聞いたとしても答えは決まっておるからな。凛の答えで決定する。』
『まじかよ...。』
『――で、改めて凛はどうじゃ?神來の屋敷に住むというのは。桜も面倒をみてくれるじゃろう。』
『えっー...と...。』
凛はあまり深く考えない事にした。
神來の屋敷には、優しく接してくれた桜もいる。凛は彼女にいくつかお礼もしたいと思っていた。
そして、聞きたい事も色々ある。
未だに神來の事はよくわからない凛であったが、他の全く知らない妖魔の屋敷に住むよりは、一度行ったことのある神來の屋敷に住む方が賢明な選択肢だと凛は考えた。
『.........はい。あのぉ~神來さんが良ければ、そちらの方でお願いします...。』
凛は勇気を振り絞って自分の意見を話した。
神來は無表情だったが、他の者は納得した様子だ。
『よし...では、凛は神來の屋敷で一年、居住する事をここに決定致す。異議はないな?』
『『『――はい。』』』
全員が了承の返事をする。
こうして凛は約一年間、乎蔵里に住むことが決定した。
『凛ちゃん、短い間だけどよろしくね!』
『凛さん!じん兄に何かされたらオレに言ってくださいっスね!』
『宜しく頼む...。』
『今度、僕の診察受けに来て下さいね。』
皆はそれぞれ凛を歓迎する言葉をかけ、快く受け入れてくれた。
そんな中、凛は神來を横目で見る。
『......。』
神來は表情を変えず、黙ったまま何も話す事はなかった。
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