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凛の事が決まったところで解散かと思われたのだが、長老はまだ解散という言葉は吐いていない。
『長老様。もう解散では?』
『まぁ待て雲条。皆に集まってもらった理由はもう一つあるのじゃ。』
雲条の問いに答える長老は、先程とは声色が変わっていた。
『――紫翠。』
『は。』
長老の言葉に返事をすると、監察長の紫翠が前へと出た。
皆の表情も引き締まる。
紫翠は口を開く。
『...単刀直入に言うが、“敵”が動き出している。直に戦となる。』
『!』
いきなりの言葉に凛は目を見開き驚いた。
他の皆は平静な表情をしていた。
紫翠は話を続けた。
『いつ攻めてきてもおかしくない状況...。先に動くか、それとも攻めてくるのを待つか...。どちらにせよ、皆準備をしておけ...。』
紫翠はそう言うと、後ろへと下がった。
『...紫翠が話した通りじゃ。また戦になる。今回は迎え撃つとするかの...。
皆、警戒を強めておれ。紫翠は引き続き、敵の監察をたのんだぞ。逐一報告を頼む。』
『『『は!』』』
皆は動じる事なく長老の言葉に返事をする。
しかし、凛だけは戸惑っていた。
敵が攻めてくる...。
彼ら妖魔の敵は幕府。本当に戦をしているのだと凛は実感する。
そんな凛の様子を察した長老は口を開いた。
『...凛。お主は何も心配せんでいい。危険は及ばん。』
『はい......。』
『――神來、頼んだぞ。』
『ああ、分かってる。』
神來は少し苛つきながらも渋々返事をする。
『...ではこれで終わりとする。皆、ご苦労じゃった。』
長老の解散を意味する言葉に、皆は長老に深く一礼をし、ぞろぞろと屋敷を出ていく。
『ほら、お前も行くぞ。モタモタすんな。』
『ふえ?....あ、はいっ!!』
ボケッとしていた凛は神來に頭を小突かれると、慌てて神來の後についていった。
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