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それから夜になっても凛は、同じ屋敷に居ながらも神來と顔を会わす事は一度も無かった。
そして今日に至る――。
神來は凛の部屋の前で止まったままだ。
『...俺もまだまだ餓鬼だな...。』
凛は人間だが悪い奴ではない。それは解っている。
しかし、神來は人間を本能的に拒絶してしまう。
それはきっと過去のせい。
それともう一つ、神來が凛を避ける理由がある。
それは...あの瞳。
神來は一度だけ凛の瞳の中を見た。
敵かを見極めるために。
ただそれだけだった。
しかし、凛の瞳には何かが宿っている。それが何かは神來にも判らなかった。
そしてその瞳を見ると胸がざわつく...。
わからない。
少しの恐怖さえ感じる。
そう、こんな事が理由の一つなのだ。
長い時を過ごしてきた自分が悩む事ではない。
またそれが、神來を無性に腹立たせていた。
『ちっ......。』
神來は軽く舌打ちをすると湯殿へと向かった。
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