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「そうかぁ…。残念やけど…しゃあないね。
せやけど、困ったことがあったらいつでも来いや。
うちにできることやったらなんでもするからな。」
そう言った由の笑顔にまた涙腺が緩んだ青葉は隠すようにもう一度頭を下げて
「はい。そうさせていただきます。」
と言った。
「それでは私そろそろ行かせていただきたいのでその…私の着物を…。」
由の持って来た朝食を食べ、少し雑談したあと青葉はそう言って腰を上げようとした。
「ええ。ええ。着物ぐらいくれたる。何をしに行くのか知らんけどあんな汚い着物やったらうまくいくことも失敗するで。」
「…そんな訳にはいきません。私はあの着物で何も気にしませんので。」
「ええて。このぐらい何でもないことやし。せめてもの餞別や。」
そう言って目を細めた由の顔を見ながら青葉はしばらく考えていたが、やがて言いにくそうに切り出した。
「お由さん、それでしたら男の方のはかまと着物をいただけないでしょうか?」
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