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しばらく僕が静かに机に向かっていると、ドアの開く音がした。
「こんにちはー」と、素敵な声と共に、誰かが入ってくる気配がする。
僕の胸は、つい高鳴る。
ほどなくして、入ってきた人物が僕のすぐ側までやって来た。
鼓動の高鳴りを抑え、僕は振り返り挨拶する。
「こんにちは、神在月先輩」
「こんにちは、玖払君」
彼女は、柔らかな笑顔と共に、僕のすぐ横に腰かけた。
彼女は、神在月 一姫<カミアリヅキ イツキ>先輩。
二年生。専門は神道。
雷剛神社という神社の跡取りで、本物の巫女さんだ。
彼女に声をかけられて、僕はこの部活に来た。
そして誘われるがまま、この部活に入部したわけだ。
僕が入部した理由は、色々あるけども、一番の理由は……。
……恥ずかしながら、この先輩に一目惚れしてしまったから、だったりする。
僕がここにくる理由の大半を、神在月先輩が占めていると言って過言でない。
身も蓋もないことを言ってしまうなら、神在月先輩に会うためだけに部活に来ているようなものだ。
「それじゃあ、昨日の続きから始めようか」
「はい!!」
先輩は、初心者である僕の教育担当だ。
この事も、僕のモチベーションを上げる要因である。
頑張れば先輩に誉めてもらえる。
だからこそ、特に興味があるわけでもない魔術の理解に努めるのだ。
既に僕にとってこの部活の存在意義は、神在月先輩との触れ合いをするための場となりつつある。
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