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扉を開けて入ってきたのは二人。
一人は、170センチくらいで、真っ黒なフードつきコートを着ている。
フードに隠されて、顔は見えない。
これが我が魔術部の部長、加藤 陽炎<カトウ カゲロウ>である。
専門は火炎術式。
気性も、それに合わせたかのように豪快である。
むしろ、荒っぽい、適当と形容したほうがいいか?
部長の側に影のように、剣のように、または執事のように控えている長身の男性は、陣内 盾<ジンナイ ジュン>先輩。副部長。
非常に物静かでクールで、基本的に表情を変えることはない。僕はまだ先輩の笑顔を見たことがない。
専門は結界などの防御術式。曰く、部長の腹心にして絶対の盾。
「全員居るか?」
部屋を見渡した部長はハスキーな声で問いかける。
ちなみに、この部長に関しては、笑顔どころか素顔を見たことすらない。いつもフードで覆い隠されている。
僕に分かるのは、その声くらいだ。
悔しいが、かなりカッコいい声である。
顔を見るのが、怖いような気がする。
もしこれで、僕なんか眼じゃないほどのイケメンだったら……。いや、考えるまい。
「全員居ますよ」
神在月先輩が返事をする。
「そうか」
頷く部長。
「なら丁度いいな」
……一体何が丁度いいのだろう。
何かする気か?
僕が部長にどういう意味か問おうと口を開きかけたその瞬間。
「お前ら準備しろ。今から妖怪退治に行く」
…………はい?
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