始動術式 何の因果か全力疾走

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 唐突だけど、ここで自己紹介をしよう。  僕の名前は玖払 銀清<クバライ ギンセイ>。私立王真<オウマ>学園一年三組。  成績、上の下。  容姿、人並み。  身長、167センチ。  体重、52キロ。  中肉中背。  得意教科、国語と数学。  趣味、特になし。  好きな食べ物は「おい玖払!! ぶつくさうっせーぞ!!」  横からの怒号で、僕の独り言は遮られた。 「うるさいのはそっちもです、部長!!」  怒鳴り返す。  そうでもしないと、この轟音のなかではかき消されてしまうのだ。 「テメェ、ぶつぶつ言ってんじゃねーよ!! 気が散るだろうが!!」 「いいじゃないですか、独り言くらい!!」 「現実逃避してんじゃねー!!」 「逃げたくもなりますよ、こんな現実!!」  後ろからは相も変わらず轟音が鳴り響いている。  少し立ち止まって振り返れば、その正体を確かめることが出来る。  ただ、それが意味するのは、死だ。  後ろから僕らを追いかけてくるのは、逃避したい現実。  その正体は。 「何ですかあのでっかいドクロの化け物はあああああ!!!!!!」 「喋ってる暇があれば走れ!! 死にたくなければな!!」  さて。  どうしてこんな状況になったのか?  それを説明するには、時間を少しばかり巻き戻す必要がある。  というわけで、しばらく僕の話に付き合ってくれ。  少しの間でいいから、この理不尽な現実から逃避したいんだ……。
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