第一術式 僕の奇妙な日常

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「姿勢、礼」 『ありがとうございましたー』  帰りの号令が終わるとすぐに、僕は荷物を担いだ。部活に向かうためだ。 「ギンセー、ギンセー」  そんな僕に、小学校からの友人である岸谷が声をかけてきた。 「何だ?」 「これから部活?」 「まぁな」 「じゃあ一緒に行こうか」 「何でだよ。部活違うだろ。お前は報道部行けよ」  岸谷は報道部に入っている。従姉さんが部長だそうだ。 「ギンセーが冷たい……」 「当たり前のこと言ってるだけだ」 「誘ったのに報道部入らないし」 「僕にだってやりたいことがあるんだよ」  実際はそんな格好いい理由ではないけども。 「いい加減何の部活入ったか教えてよー」 「断る」 「まさか、エロ本研究部とか、人に言えないような部活に入ったんじゃ痛い痛いごめんなさい」  鼻をつまんで引っ張ってやった。  離すと、うーあーとか言いながら涙目でこっちを睨み付けてきた。 「そんな目で見ても教えてやらねーからな」 「ケチ。まさか本当にエロ本研究部に入っている訳じゃないでしょ?」 「入ってたまるかそんな部活」 「もし入ってるならすぐ辞めなよ。そんな部活入らなくてもいくらでも見せてあげるから」 「いらん」  僕は教室を出る。岸谷も着いてくる。 「何で教えてくれないのさ」 「人間、軽々しく言えないことがあるんだよ」  たかが部活で大袈裟な、と言われるかも知れないけれど、あの部活のことについて話すわけにはいかない。
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