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僕が向かうのは、部室棟ではなく特別教室棟。
一階の突き当たり、窓もドアもない、薄暗い一角。
きょろきょろと辺りを見回して、誰も居ないことを確認。
「岸谷の気配もなし、と……」
チェックは念入りに。
万が一、今から起こる光景を見られたら大変だ。
元々人の目に付きにくい場所ではあるが、念には念をいれるべきだろう。
半径30メートル以内に誰も居ないことを確認して、僕は向き直る。
前には、何もない壁。
それに向かって、僕は掌を向ける。
途端。
壁に展開する赤の魔方陣。
僕は、ポツリと呟く。
魔法の言葉を。
「我、血を預けたる魔術師なり。その名の下に開かれよ、隠蔽の門」
その言葉と同時、ドアがにじみ出るように現れた。
僕は躊躇なくドアノブに手をかけ、その中に入る。
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