序羽 シャーロットの願い

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  私は、その小さな彼女を『スワン』と名付けた。 正確には私が考えたのではない。妻のかねてからの願いだったのだ。 大空を羽ばたく、力強く美しい白鳥のように。 健康だとはあまり言えなかった妻の、最後の願いだったのかもしれない。 自分の娘を思った、これ以上ない願い。 健康に育っていく彼女を見て、妻の願いは叶えられたのだと、そう信じていた。 しかし、それは間違いだった。 きっと彼女は、今際のときにこう思っていたのだろう。 『どうかこの子が、命有る限り誰にも邪魔されず生をまっとうできますように』  
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