序羽 シャーロットの願い

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  「ついに、完成した…!!」 私は、歓喜の声をあげた。 長年悩みつづけてきた研究が、やっと終わりを迎えたのだ。 終わったといっても、常に新しい何かを求めるのが研究者の性。 また新しい研究に没頭し過ぎて、妻に悪態をつかれるに違いない。 そんなことを思って、苦笑しながら右手首に巻かれた腕時計を見た。 そろそろ時間だ。 もうすぐ、家族が増える。 こんな時にまでお父さんは仕事をしていたのよ、なんて妻が小さな子供に言う様子を思い浮かべて、私はまた苦笑した。 仕事も一段落ついた。落ち着いたら、三人でどこかに出掛けよう。 私は病院へ向かおうと、まだ喜びを分かち合っている助手達へ外出を告げた。 「ハルフィード教授、おめでとうございます」 皆口々にそう言い、私を笑顔で送り出してくれた。 自然と口元が緩み、研究所を出る足どりは軽い。  
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