序羽 シャーロットの願い

5/8
前へ
/8ページ
次へ
  病院の廊下を、私は駆け抜けた。 制止をかける看護師の言葉も聞かずに目的の場所へ向かう。 途中、何度か反応の鈍い医療用ロボットにぶつかりそうになったが、今はそんなことどうでもよかった。 ただ、幸せな妻の顔を見るために。 もう一度、彼女達との生活を取り戻すために。 私は希望に満ちた笑顔で、ドアを開けた。 しかし、そこにいたのは、もう二度と微笑むことのない妻だった。 彼女の側に立っていた医者と看護師が、気の毒そうに私を見た。 私は妻の体を揺らした。両肩を抱えるように持って、ブンブンと揺らした。 『あなた、そんなに慌てないで』 微笑みながら言う、妻のその声が聞きたくて。 幸せそうに笑う、彼女の顔が見たくて。 けれどそれは叶わなくて、私は妻の体を抱きしめた。 頬に涙が流れるのを私は感じた。  
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加