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「シャーロット……」
渇いた唇が紡いだのは、妻の名だった。
抱きしめた体は、ひどく軽くて、冷たさよりもずっと死を感じさせた。
腕の中の妻は、返事をくれない。
私はもう、彼女を幸せにはできない。
私には、涙を流すことしかできなかった。
すまない、と、謝罪の言葉が口をついて出て、私は自分を殺したくなった。
それでも、すまない、すまないとうわ言のように繰り返した。
私は、私の罪を軽くしたかったのかもしれない。
そんなことは叶わないと、とうに知っていたはずなのに。
どれだけの時間がたったのか分からなくなった頃、未だに死んだ妻を抱きしめ続ける私に、看護師が告げた。
「……娘さんが、奥でお待ちです」
それだけ言うと、看護師は口に手を当てて部屋を出ていった。
泣くのをこらえていたのだろうか、と私は妙に冷静になって思った。
私は、静かに妻の体をベッドに寝かせて、奥の部屋に向かった。
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