序羽 シャーロットの願い

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  部屋に入ると、看護師が何か白い包みを持って座っていた。 その白い包みが赤ん坊だと気付くのに、時間はかからなかった。 看護師は私に気付くと、唇を噛んで深く頭を下げた。 私も同じように頭を下げると、頭上から声が聞こえた。 「かわいい、女の子です」 私が顔をあげると、看護師は私に赤ん坊を抱かせようとした。 何とか抱きかかえて、そっと赤ん坊の顔を覗きこむ。 目は、まだ閉じていた。だから、起きているのか寝ているのかは分からなかった。 ただ辛うじて、腕に感じる小さな温もりから、私はすべてを失ったわけではないという安心を感じた。 小さな唇が、パクパクと動いた。 それから、悲鳴のような泣き声を、赤ん坊はあげた。 私は思わず手を離しそうになってしまい、慌てて抱き直した。 それでもどうにも出来なくて看護師に預けると、赤ん坊は何事もなかったかのように寝息をたて始めた。 私はその小さな手を見て思った。 もう二度と、私はこの手を離したりはしない。 妻の忘れ形見を、今度こそ幸せにすると。  
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