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「…ッまた…またあの夢。」
見たくて見た夢ではない。
思い出したくもない出来事が頭を過る。
毎日魘される訳ではないが、たまに見るこの夢のせいで朝から気分がよくないのもしばしば。
窓から差し込んでくる光に真っ黒な短い髪が照らされ、遠くから鳥の囀ずりが聴こえてくる。
「あれ?アベル起きてたんだ。クラウスが朝ご飯出来たから呼んでこいって。」
「ありがとう。カレン。」
ドアを開けて顔だけを出し、その男…アベルを起こしに来たのは赤く長い髪が特徴的なカレンと呼ばれる女性。
「どういたしまして。それよりまたあの夢見たでしょ。」
カレンが部屋に入りアベルに近づく。
「ああ。なんで分かった?」
「ははっ!顔に書いてあるよ!…さ、私は顔洗ってから行くね。アベルは先に行ってて。」
アベルは重たい足取りで朝食へ向かった。
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