王家の秘密

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「……」  緋依の顔のつくりは、緋恋のそれと瓜二つ。 「……」  緋花には、緋依の自分を責め立てる眼差しが、まるで緋恋の気持ちを代弁しているかのように見えた。 「……貴女の、所為でもあるのよ」  だから、言い訳でもするかのように、緋花は小さく呟いた。 「え?」  緋依の訝しげな声に、緋花はハッと手で口を押さえた。  だが、もう遅い。 「どういう、こと……私の所為って、何?」 「……」 「ねぇ!」  緋花は首を横に振り、口を開くつもりはないと示したが、緋依は納得出来るはずもなく、机の上に両手を置き緋花に詰め寄った。 「お母様、答えて!」 「貴女は、緋恋の事ばかりね……優しいけれど、少しは自分の怒りもぶつけなさいよ」 「誤魔化さないで!」 「貴女にも、婚約者をつけたのに……ああ、相手がよかったからかしら?」 「お母様っ」 「ごめんね」 「……」 「本当に、先ほどの失言は忘れて。貴女の所為って言ってしまったけれど、ただの言い訳……全部、私が悪いんだもの」  緋花は椅子から立ち上がり、腕を伸ばして緋依の頬に、そっと触れた。  「貴女にこんな顔をさせて……緋羅に怒られちゃうわね」 「!」  自嘲的な笑みを浮かべ、緋花はそえた手で緋依の頬を二、三度優しく擦る。 「お母様は……やっぱり、お父様を忘れていないわよね」  眉を垂らし、か細い声で緋依が放った言葉に、緋花の頭に緋恋の姿が過り、胸に小さく痛みが走る。  それでも。 「私が緋羅以外の男を愛すなんてこと、これから先何万年生きようとも……絶対にないわ」  はっきりと緋羅への想いを言い切った緋花は、「でも、」と続ける。
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