決めた道

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『何の為にですか』 『餌のお前に、私が答える義務はない』   『……』  所詮は身分を盾にしなければ吠えれない子犬のくせに、と利洲は眉間に皺を寄せ、胸の内でごちる。 『嫌だ、と言ったら?』 『なっ、……強行突破をするのみだ! ――!』  灰色のマントをたなびかせながら代表者が何かを唱え、三匹は利洲へと一斉に飛びかかった。  フードで顔は見えないが、その奥にある瞳が赤く光ったのが、利洲にはわかった。  利洲は溜め息を吐きながら、背から相棒の刀を抜き取り、構えた。  鮫の鱗で造られたその刀は、自他共に認める鋭さと、岩壁をも砕く固さを誇る。  柄の長さや刃の形などは利洲に合ったものに細工がされてあるため、扱えるのは利洲だけである。  正面から来た一匹を、利洲は刀を横に振り、薙ぎ払った。  虚をつかれたような表情を浮かべたその者は、『ぐあ!』と呻き声を上げ飛んでいき、頭部から壁に突っ込んだ。  首の骨を折ったらしく、廊下の端で失神した。  驚愕の表情を浮かべながら左右から来ていた二匹も、利洲は躊躇い無く、同様にふっ飛ばす。  一匹は運よく背から突っ込みあまり衝撃はなかったようだが、もう一匹は最初の一匹と同じように頭から突っ込み、頭部が割れ、失神していた。   『何故……何故!鮫ごときのお前に、我らの術が効いておらぬのだ!』  意識ある一匹が叫ぶ。  利洲は刀を背の鞘に仕舞い、叫んだ者に静かに近寄ると、膝を曲げしゃがみこんだ。  腕を伸ばして灰色のフードをわし掴みにすると、掴まれた元老会の者は、顎を小刻 みに動かし歯を鳴らし始めた。  その者からは、明らかな怯えが伝わった。  だが、だからといって利洲の気には留まらず。  利洲は後ろ手で腰から小刀を取り出して――。 『申し訳ございませんが……俺には姫様以上のお力を持つ方でないと、術は効きませんので』 『あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!』    迷うことなく、刃先をその者の心臓に突き刺した。
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