決めた道

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 利洲は、刀を持つ手首をひねり、一気に引き抜いた――噴水のように、勢いよく血が吹き出る。  やがて、流れ出る血の量が減り始めると、元老会の者の体は、顔から順に灰になっていった。  次いで、利洲は残る二匹も同様に始末する。  三匹目が灰に成り行く様を静かに眺めていると、またもや此方に近づいてくる足音が、利洲の耳に届いた。  顔を上げ、耳を澄ませる――足音は、一匹分。  だが、今度近づいてくる者の足音には、利洲の知っている特徴があったから、無駄な"期待"はせずにすんだ。  足音の主はすぐ傍まで来たようだが、こちらからは姿が見えない位置で止まった。 『騒がしいと思ってきてみれば……』  低く渋味のある声が静かな廊下に反響し、利洲の耳に鮮明に届いた。 『……コイツらは、何だ』  黒豹族の長かつ直属騎士団団長――理苑(りおん)の声。 『恐らく、元老会の下端かと思われます』 『性懲りもなく、また来たのか』 『はい。三匹ほど』 『そうか……ご苦労だったな。灰の始末は任せておけ、また蒼たちに片付けに来させる』  ありがとうございます、と利洲が返事を返すと、理苑の足音は遠ざかっていった。  その音が完全に聞こえてこなくなると、利洲は足を動かし、元老会の者たちが来る前と同じ位置……赤子を抱いた聖母が描かれた赤い扉の前で、ドカッとあぐらをかいて座った。  
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