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利洲が緋依の餌となってから、約六千年。
当然、王家を護衛する王家直属騎士団と利洲が話をする機会も、度々あった。
騎士団の団員たちは理苑を筆頭に王家への忠誠心は厚く、また、心優しい者が多いとされている。
特に、緋依の身の回りの世話係を主の仕事とする蒼と圭とは、利洲にとって、緋依と共にいた時間と同じ時間の長さの付き合いになる。
利洲が鮫だからなのか、蒼は昔から、秋や葉には温厚な素振りをみせるのにも関わらず、利洲にだけ毒を吐く。
利洲も、最初の方こそはその毒と、言い返せない自分の立場に腹立ちを感じていた。
しかし三百年ほどが経った頃には、言い方こそ悪いものの、蒼の毒は全て正論だということに気がつき、毒を吐かれた時は大人しく耳を傾けるようになっていた。
ただ、利洲は今でもたまに、思うことがある。
もしも自分が蒼よりも、もっとずっと歳を取っていたら、蒼は自分を庵に接するように、敬っていたのかもしれない、と。
『貴方がココにいても灰を増やすばかりだということですわ』
また、もしも自分が蒼よりも、もっとずっと遅くに生まれていたら――蒼は自分に優しかったかもしれない、とも。
『……どういうことでしょうか』
蒼の言っていることの意味がわからなくて思わず眉を潜める利洲に、
『これだから無能な魚は嫌いなんですの』
蒼はまた毒を吐く。
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