決めた道

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 天井から蒼に視線を戻した利洲の視界の左上に、またもや塵取りが入る。  しかし先ほどとは異なり、面の上に灰はない。   『心は、姫様の帰りを待ち続けております』 『……』 『しかし、私がこの扉の先を守り抜くと決めたのは、姫様のお帰りを待つ為ではございません』 『……では、一体何の為に』 『私は、今まで三度姫様に誓いを立てました』 『……』 『一度目は、姫の餌になったとき』 『……二度目は、婚儀のときね』 『はい。あの日、姫様と庵様のご結婚が取り決められたときに』 『……』 『そして三度目は……姫様が城を去られた日に』  利洲がそう続けると、蒼はまるで苦虫を噛み潰したようにぐっと苦痛に満ちた表情を浮かべ、思い出したくないものを思い出してしまったとでも言うように、頭を横に振って俯いた。
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